平成31年度 (2019年度) 基盤研究A(19H00544)

天文学との連携にもとづく考古学・古代史学研究法の構築

研究実施計画

 本研究では各研究者の専門領域に則して考古学・人類学斑5名、文献史学斑2名、天文学斑3名からなる4斑を組織する。前3斑はそれぞれの課題について適宜後1斑の助言を受けつつ研究を遂行し、その結果を後1斑が評価したうえで所見を詰める。この手順に則して共同研究を進める。各班に課される課題の内容と役割分担は以下のとおりである。 

考古学・人類学班(北條・後藤・瀬川・辻田・石村)

  • a) 北海道の縄文・続縄文・擦文時代埋葬関連遺跡・アイヌ民族に関する埋葬頭位・祭祀関連遺跡の主軸方位、火山など周辺景観との関係に関わる法則性の有無や多様性の検討、および民俗事例との比較点検。本課題については主に瀬川が担い北條が補佐する。
  • b) 本州・九州・四国の縄文・弥生時代遺跡における埋葬頭位・祭祀関連遺構の主軸方位や火山など周辺景観との関係にみる法則性の有無・多様性の検討。この課題については北條・後藤・瀬川・石村・辻田がそれぞれ対象地域を分けて実施する。
  • c) 本州・九州・四国における古墳の主軸方位・埋葬頭位・首長居館など祭祀関連遺構の主軸方位、火山など周辺景観との対応関係に関わる法則性の再点検。この課題については主に辻田が担い北條が補佐する。
  • d) 琉球地域のグスク・御嶽における主軸方位、周辺景観との対応関係の点検、および近世併行期に設置された星見石・方位石の軸線と天文現象との対応関係の検討。この課題については北條が担い後藤・石村・高田が補佐する。
  • e) 南太平洋島嶼部における天文現象と航海術・神話との関係についての検討。この課題については後藤と石村が担い高田が補佐する。

文献史学班(田中・細井) 

  • a) 『日本書紀』・『風土記』・『万葉集』・『延喜式』などにおける天体現象と祭祀に関わる諸事象の抽出と点検。この課題については細井と田中が担当する。
  • b) 暦学による古代天文史料の年代観の点検。この課題については細井が担当する。
  • c) 万葉集・おもろ草紙等における太陽と月、その他天文現象の取り扱われ方および先行研究の再点検。本課題については田中が担い、研究協力者として参画予定の保立が補佐する。
  • d) 天文現象と太陽や月その他諸星について論じた先行研究を神話の文献的研究のみでなく日本文学の研究を含めた収集を実施し再点検する。本課題については田中と細井が担う。

天文学班(関口・高田・吉田)

  • a) 考古学班から提示される上記5項目の各所見に対する天文学的側面からの評価。この課題については関口と吉田が担う。
  • b) 文献史学班から提示される3項目の個別知見に対する天文学的側面からの検討。この課題については高田が担い関口と吉田が補佐する。
  • c) 古天文学において提示されてきた古代史と天文現象に関する諸見解の再整理。本課題については高田が担う。
  • d) 天文現象と航法、農事暦に関する民俗資料の収集と整理。本課題については高田が担う。

以上の役割分担のもとで研究を遂行したのち、天文現象に対する人類の認知構造の普遍性と地域性の追求を全研究者の意見交換のもとで進める。さらに本研究の成果を社会に還元するための可搬型プラネタリウムを高田と吉田が構築し、地方自治体等での上映を計画する。